オーストラリア/クレイドル・マウンテン=セント・クレア湖国立公園~極寒のタスマニアを生き抜くウォンバット~


【名称】クレイドル・マウンテン-セント・クレア湖国立公園(Cradle Mountain-Lake St Clair National Park)

【おすすめ度】★★★★★5

【見れた動物】ウォンバット、タスマニアンパディメロン、ワラビーなど

【ポイント】200万年以上にわたる氷河の浸食と堆積によって形成されたオーストラリアを代表する国立公園。多様な植生がモザイク状に広がり、固有種・絶滅危惧種の貴重な生息地となっている。複数のトレイルが整備されており、ビギナーからベテランまで散策を楽しめる。

【料金】​Daily pass 23.25AUD≒2,282円

【アクセス】タスマニア第二の都市ローンセストンからビジターセンターまで車で約2時間。

【公式サイト】https://parks.tas.gov.au/explore-our-parks/cradle-mountain

※2024年9月

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_1

せっかくタスマニア島に来たからには、野生のカモノハシ観察だけで終わるのはもったいありません。

世界一奇妙な動物探しを一度中断し、クレイドル・マウンテン=セント・クレア湖国立公園へと車を進めました。

9月は日本では夏ですが、オーストラリアでは冬になります。

標高があがるにつれ気温が下がり、ビジターセンターに到着したときには雪が舞っていました。

オーストラリア_タスマニア島_カモノハシ_2

オーストラリア/タスマニア島~野生のカモノハシを待つ!3つの観察スポット~

クレイドル・マウンテン=セント・クレア湖国立公園とは

200万年以上の氷河の浸食と体積によって形成されたクレイドル・マウンテン=セント・クレア湖国立公園。

オーストラリアを代表する国立公園であり、原生林や渓谷、氷河湖、高原地帯など植生群落がモザイク状に広がっています。

これらの多様な自然環境は、多くの固有種や絶滅危惧種の生息地となっており、貴重な生物多様性を支えており、タスマニアデビルやオオフクロネコ、ウォンバット、ワラビー、カモノハシ、ハリモグラなど、タスマニアを象徴する動物たちが暮らしています。

また、先住民アボリジニの文化的・スピリチュアル的な遺産も数多く残されており、自然と文化が共存する特別な場所として、世界遺産にも登録されています。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園
タスマニア島にあるクレイドル・マウンテン-セント・クレア湖国立公園

散策の起点となるのがビジターセンター。

ここを起点に子どもから大人、ビギナーからベテランまで、様々な層がこの大自然を満喫できるトレイルが整備されています。

一番オーソドックスなのはDove Lake(ダブ湖)を一周するトレイル。

クレイドル・マウンテンの雄大なシルエットを見ながら、気持ちのいいハイキングを楽しめます。

ビジターセンターからDove Lakeまではシャトルバスが走っており、スタート地点まで簡単に行くことができます。(公園内は自家用車進入禁止です)

クレイドル・マウンテン-セント・クレア湖国立公園_2
20分に1本シャトルバスが走っています

ただし、この日は悪天候だったため、公園内のバスは運行していませんでした。

ビジターセンターのスタッフに聞くと、バスはないものの国立公園内に歩いて入ることはできるとのこと。

ただし進むに連れ雪深くなるのと、暗くなるのも早いから気を付けてというアドバイスをもらいました。

日暮れまでは約6時間。

Dove Lakeまでは辿りつけそうですが、一周は難しそうな時間でしたが、せっかく来たので歩くことにしました。

バスが運休のため、国立公園の入場料がかからなかったのはラッキーでした。

厳しい冬を乗り越える野生動物

手元の携帯を見ると気温は2℃。

数日前まで日本の酷暑に耐えていた僕にとっては異世界です。

念のため持ってきたヒートテックやウルトラライトダウン、ゴアテックス、そしてPlatypus Houseで買ったお土産のニット帽(買っといて良かったです)を被り、いざ国立公園内へ。

ビジターセンター脇に全長200mほどのトレイルがあったため、まずはそこを歩きました。

静かな道を進んで行くと、何やら木とは違う物体を発見。

ワラビーがいました!

ぴょこぴょこ動きまわっているイメージでしたが、雪まじりの雨の中ではワラビーも辛いようで、なんとも言えない表情で耐え忍んでいました。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ワラビー
寒さに震えるワラビー

さらに進むとウォンバットを見つけました!

このウォンバットこそ、クレイドル・マウンテン国立公園で出会いたかった動物です。

タスマニア全域に生息していますが、昼間は地面にトンネルを掘って暮らす夜行性のため、日中にその姿を見かけることは難しいです。

標高が高く一年を通して涼しいクレイドル・マウンテン国立公園では、一般的なウォンバットの生活リズムとは異なり、日中に地上へ出て採食する個体も多く、目にするチャンスが高いとされています。

そのため、ウォンバットを見にこの国立公園を訪れました。

とはいえ、こんなにも早く出会えるとは思っておらず、そののんびりとした愛らしい姿も相まって、少し拍子抜けしてしまいました。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_3
ずんぐりむっくりなウォンバット

雪が降り、視界も決して良好とは言えず、さらに人も少ないこの日のクレイドル・マウンテン国立公園。

まるで夜だと勘違いしたかのように、この後、多くのウォンバットと遭遇することになりました。

たくましいウォンバット

短いトレイルの次はいよいよ本格的な大自然を歩きます。

最初は小川が流れる湿地帯。

日本にもありそうな景色でどこか懐かしさを感じます。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_トレイル_1
木道が整備されており、歩きやすい

そこを抜けるとしんとした森にでました。

夏には美しい野花が咲き乱れ、秋には紅葉が楽しむことができるそうですが、冬は静かでモノクロな世界が広がっています。

最初にあったワラビーのように、野生動物はどこかでじっと佇んでいるのでしょうか。

動物の気配はまったく感じられません。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_トレイル_2
景色はだんだんと銀世界に

標高があがるにつれ、どんどんと景色は白銀となり、そして雪が本格的に振り出しました。

気温は氷点下。

かじかむ手と足を常に動かしながら、トレイルを進みます。

すると、固形物が木道に転がっていました。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_4
四角いウンチはウォンバットのもの

動物好きなら一目でわかる、ウォンバットのうんちです。

とても珍しい四角い形をしています。

転がりずらい排泄物をすることによって、マーキングをしやすくすると考えられています。

腸の形状や肛門の収縮の影響によってこの形になるそうです。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_5
雪原で生きるウォンバット

森を抜けると草原のような環境となりました。

遠目に黒い塊が動く姿を確認。

またしてもウォンバットです。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_6
厳しい環境を耐え忍ぶ姿に感動しました

足元には水が流れ、上空からは雪が降る厳しい環境の中、生きるために草を食べようとしてます。

愛くるしさが特徴のウォンバットですが、その姿を見たときは、可愛らしいさはまったく感じませんでした。

むしろ、生命のたくましさと強さを深く感じました。

野生動物のパワー

2時間半程かけてやっと本来のダブ湖トレッキングのスタート地点に到着。

湖一周するのにも2時間程かかるそうですが、日暮れが迫っていたため、湖畔の道を少しだけ進むことにしました。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_6
驚かさないようにそっと進みます

ここでは5匹のウォンバットに遭遇。

どの個体も必死に雪をまさぐっていました。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_ウォンバット_6
雪下にある草を求めて

タイムリミットが近づくにつれ、寒さもさらに厳しくなりました。

運よくバスが再開していないかなと期待したのですが、そうはうまくいかず、同じ道を戻り、ビジターセンターに無事到着。

安全を最優先に行動し、予定通り日没の1時間前に無事戻ってくることができました。

オーストラリア-タスマニア島のクレイドル・マウンテン国立公園_タスマニアンパディメロン
見るからに寒そうなタスマニアンパディメロン

ビジターセンターすぐ近くのDiscovery Parksを予約していたので、すぐに暖かいシャワーを浴びることができました。

本当はここに泊ることで、セルフナイトハイクをしようと思っていたのですが、仮眠後にカーテンをあけると吹雪いていたので、中止にしました。


オーストラリアといえば、カラッとした暑さを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

動物園のオーストラリアエリアも、乾燥した土地を再現していることがほとんどです。

実際僕もまさか極寒の中でたくましく生きる野生動物に出会えるとは思っていませんでした。

懸命に生きるその姿は、まさに“野生”そのもの。

野生動物が持つ力強いエネルギーに触れると、自分も頑張ろうといつも励まされます。