【名称】タロンガ動物園(Taronga Zoo Sydney)
【おすすめ度】★★★★☆4
【見れた動物】コアラ、ディンゴ、タスマニアデビル、ハリモグラなど。
【ポイント】オーストリア最大級の動物園。希少な固有種を中心に4000種以上の動物を飼育展示している。キリンの展望台から見えるシドニー港の絶景が多くの観光客を魅了している。
【料金】1,400KES≒1,722円
【アクセス】サーキュラー・キー(Circular Quay)の港からフェリーで12分
【公式サイト】https://taronga.org.au/sydney-zoo
※2024年9月

ケニアから帰国し、再就職活動を終えひと段落した9月上旬。
新生活までまた少し時間があいたので、オーストリアへとやってきました。
世界最古の大陸オーストラリア。
遥か昔から地理的に孤立していたこと、そして乾燥地帯から熱帯雨林まで多様な生態系が広がっていることから、独自の進化を遂げた動植物が数多く生息しています。
自国の動物のうち8割~9割は固有種であるほか、年々新種も発見されており、マダガスカルやインドネシアと同様世界有数の固有種大国です。
僕にとってはローンパイン・コアラ・サンクチュアリ以来2度目の訪問です。
珍しい動物好きには堪らない国に来た理由はとある島に行くこと。
まずは大都市シドニーに降り立ちました。
日本では厳しい暑さが続いてましたが、南半球に位置するオーストラリアの気候は真反対。
薄手の上着一枚でちょうどいい、心地よい天気の中、フェリーに乗ってタロンガ動物園へ行ってきました。

タロンガ動物園とは

シドニー港を見下ろす丘であるモスマン地区に佇むタロンガ動物園はオーストラリア最大級の動物園。
広大な敷地には、オーストラリア固有種を中心に、約5,000頭以上の動物が飼育されています。
シドニーの人気観光地ですが、ただ動物を飼育展示しているわけではなく、野生動物の保護や研究、そして教育に力を入れています。

特に力を入れているのがタスマニアデビルの保護と繁殖活動。
タスマニアデビルの間ではデビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)という感染症が長年はやっており、これまでに野生下の60%以上がこの病によって絶命したとされています。
死骸を食べるデビルの習性として食事の際や繫殖期の際、他の個体を噛むというものがあります。
DFTDは、DFTDを持つ個体が他の個体を噛んで移る伝染する顔のがんであり、感染すると口内に海綿状の炎症が生じてただれ、最終的には食事ができなくなり、衰弱して命を落としてしまうといった、恐ろしい病気です。
致死率はほぼ100%。個体群間での遺伝的変異の少なさ、つまりウイルスをウイルスと認識する身体の機能が乏しいことが要因だそうです。

タロンガ動物園が取り組んでいるのは、病気にかかっていないタスマニアデビルを保護し、繁殖をさせること。
タスマニアデビルが減少すると食物連鎖のバランスが変わってしまうため、種の遺伝的多様性と健康を維持するために、他団体と一緒にSave The Tasmanian Devil Program (STTDP)というものに取り組んでいます。

園内の様子
世界遺産のオペラハウスやハーバーブリッジを横目にシドニー湾を進むこと12分。
フェリーを降りたつとすぐに動物園南側のゲートに到着します。

タロンガ動物園は丘の斜面に沿って建てられており、フェリー乗り場側のゲートから入場すると、斜面を登りながらの散策が始まります。
アップダウンが多く、加えてマップがやや複雑で気持ちよく一筆書きで周ることができない、そして豪州最大級と、かなりの歩数が嵩み、とても疲れました。
ベンチや水分補給できる場所は至るところにあるので、適度に休憩を取りながら回ってみてください。

園内は複数のエリアに分かれており、オーストラリア固有の動物が暮らす「Nura Diya Australia」、キリンやゾウが見られる「アフリカンサバンナ」、熱帯雨林の生態系を再現した「レインフォレスト・トレイル」などがあります。
各エリア・飼育場ごとに雰囲気が異なり、細部までこだわりを感じます。
また、ポップで鮮やかな看板や施設が多く、ロンドン動物園を彷彿とさせました。
スマトラトラのエリアは、飛行機からスタート。

船内の映像にてスマトラの概要を学んだ後に、実物に出会うことができます。
エリアの出口には、トラの生息地の環境を守るための買い物を学べるできる疑似ショッピングブースも設置されていました。

アフリカンサバンナエリアには、共存する人々や研究者、地元住民の言葉が紹介されています。
動物たちと密接に関わる彼らのメッセージは、美しい自然環境を守ることの重要性を改めて考えさせてくれます。

キリンの飼育場から見るシドニー港の絶景
園名の「タロンガ」とは、オーストラリアの先住民族アボリジニの言葉で“美しい景色”を意味します。
その名の通り、特定の場所から見る景色がこの動物園の最大の魅力の一つです。
それが、アフリカンサバンナエリアにあるキリンの飼育場の展望台からの景色。

丘の頂上付近に位置しているため、シドニー港の絶景が一望でき、世界遺産のオペラハウスやハーバーブリッジも見ることができます。
タイミングが合えば、ハーバービューを背に悠然と歩くキリンの姿を楽しむことができ、開放感に包まれながら美しい風景を堪能できます。
オーストラリアの多彩な固有種
一般の観光客にとって、美しい景色と愛くるしい有袋類が魅力的かと思いますが、ぜひ豪州ならではの固有種の観察も忘れないでください。
タロンガ動物園は特に固有種の飼育展示に力を入れており、日本でもお馴染みのコアラやカンガルーはもちろん、世界の動物園ではなかなかお目にかかれない動物が数多く飼育されています。
アボリジニの言葉で「この地の家」と名付けられたNura Diya Australiaエリア。
ここに、タスマニアデビルやクオッカ、カモノハシにハリモグラ、ヒクイドリ、ウォンバット、セスジキノボリーカンガルーなど、オーストラリア特有の動物たちが一堂に集まっています。

野生の犬であるディンゴとは初めての出会いでした。
見た目はオオカミや野犬とは異なり、明るい黄土色とどこか怪しい目つきが独特な存在であることを際立たせています。
動物が好きな私ですが、犬は苦手で、この後予定している野生動物観察では絶対に出会いたくないと思いました。


Nura Diya Australiaの中でも夜行性館(Nocturnal Country)は、特に見応え抜群。
世界で2科3種しかない単孔類(卵を産む哺乳類)であるカモノハシとハリモグラ両方が飼育されているほか、ネズミカンガルーやポッサム、黄色い腹を持つフクロモモンガなどを観察できたのは、どれも貴重な体験でした。

苦手な方もせっかく来たのであれば、爬虫類・両生類館にもぜひ寄ってみてください。
館内にいた爬虫類・両生類は超レアな動物ばかり。
それぞれ分布図が掲示されているのですが、ほとんどが丸や点のみで示されており、その生息域の小ささに驚かされました。


世界でもオーストラリアのみ、そしてそのオーストラリアの中でも特定の地域にしか生息していない超貴重な小さな動物達。
人間の活動が少しでも影響を与えれば、彼らの絶滅を防ぐことは難しいでしょう。
この動物園の保護活動と意識向上が、彼らの未来を守るための希望となることを心より願っています。


タロンガ動物園ほど、自国の動物の飼育展示、そして保護や繁殖活動にも積極的に取り組んでいる動物園は、世界的に見てもそう多くはないのではと感じました。
確かにオーストラリアには固有種が多く、コアラやカンガルーといった世界的に人気の高い動物が数多く存在します。
そのため、こうした動物を飼育展示することで来園者を集めやすいという側面もあるかもしれません。
ただ、園内を巡る中で、オーストラリアの動物たちがどのような環境で生きているのか、どのような脅威にさらされているのかを学べる展示が多くありました。

身近な自然で暮らす動物たちについて知ること、自国の生物多様性の豊かさを再認識することは、結果的に日常生活の中で自然や動物に対してより優しい視点を持つことにつながるのではないかと思います。
日本にも固有の野生動物が数多く存在しています。
その生態や保護の重要性について学べる、国内固有種にフォーカスした動物園があれば、より多くの人が身近な自然環境に対する意識を高めることができるのではないかと思いました。