【名称】ハラーパーク(Bamburi Haller Park)
【おすすめ度】★★★★★5
【見れた動物】ロスチャイルドキリン、エランド、カバ、ゲムズボック、クロコダイルなど。
【ポイント】ケニア第二の都市モンバサにある森林公園兼動物園。ハラー博士の考えに基づいて、ヤスデやカバが活躍し、廃れた採石場跡地が豊かな自然環境を持つ森林公園として再生した。ロスチャイルドキリンに餌やりができる。
【料金】1,400KES≒1,722円
【アクセス】モンバサ中心部よりトゥクトゥクで約30分
【公式サイト】https://www.lafarge.co.ke/bamburi-haller-park
※2024年7月
首都ナイロビを起点に、西のオロイスクット保護区、北のマウントケニア野生動物保護区動物孤児院を経て、今度はケニアの東へとやってきました。
サファリトレインに乗り到着したのは、ケニア第二の都市モンバサ。
インド洋に面する港町はムスリム商人とのインド洋交易で栄えた歴史があるため、イスラム・アラブ文化の異国情緒と活気があふれる町です。
モンバサを含む東アフリカのインド洋沿岸地域に根付いていた文化と交易によってもたらされたイスラム・アラブ文化が融合したのがスワヒリ文化であり、スワヒリ語が生まれた地域でもあります。
インド洋交易の中では象牙の取引も数多く行われていました。
現在は行われていないことを願いますが、モンバサの発展にも大きくな要因のひとつだったことから、至る所に象のモニュメントや看板があります。
ナイロビとは全く異なる雰囲気が、少しマンネリ化していたケニアの旅に新たな刺激をもたらしてくれました。
心機一転トゥクトゥクに乗り、気持ちの良い海風を感じながら、バンブリ・ハラー・パークへと向かいました。
バンブリ・ハラー・パークとは?
モンバサビーチからは徒歩圏内にあるバンブリ・ハラー・パークは巨大な森林公園。
木々が生い茂りベルベットモンキーがウロチョロする公園内に飼育場が点在しています。
この場所は1970年代まで、セメントの原材料である石灰石の採石場でした。
埋蔵量はバンブリ・セメント社のセメント生産量が数年間で20倍に増加するほどだったそうです。
採石がどんどん進むにつれて、地形だけでなく生態系も破壊され、最終的には荒れ果てた不毛の土地が残されました。
この地を見捨てることもできたかと思います。
しかし、バンブリ・セメント社は放置をせずに、何とか再生して地域社会にとって有益な空間にしたいと考えました。
そこで立ち上がったのがスイスのルネ・ハラー博士。
園芸学や熱帯農学の専門家であるハラー博士はバンブリ・セメント社の庭師に任命され、この荒れ果てた土地の再生に着手しました。
多種多様な木々が茂る園内
ハラー・パークは森林公園というだけあって、緑に溢れています。
ハイキングやトレッキングコース、ピクニックエリアも充実しており、平日に行ったのですが家族連れや学生団体で賑わっていました。
採石場跡の再生にあたってハラー博士がまず取り組んだのが植林。
しかしそう簡単にはうまくいきませんでした。
土地は瘦せ衰え、そして塩分を含んだ地下水の影響により、植物が育ちにくい環境だったためです。
実験に実験を重ね、この土地でも育つ木を探し出すのには10年以上かかったそうです。
さらにハラー博士は更に多くの木々が育つように土壌の再生にも取り組みました。
そこで目を付けたのがモンバサトレインという異名を持つ赤足のヤスデ。
植物を食べ分解し、それを栄養価の高い糞として排出する「分解者」を採石場跡に放しました。
すると、ゆっくりとですが着実に土壌の生態系が改善され、それに伴い多様な植物の栽培にも成功しました。
現在では、モクマオウやココヤシ、バオバブ、バナナ、マンゴーなどが生い茂る、植生豊かな森林公園となっています。
サーカスから来た救世主
森林公園化に伴いもう一つの問題が出てきました。
公園内に作った池に魚が住みつかなかったのです。
何度放流してもすぐに死んでしまうほど、池の水質は悪いものでした
そこでハラー博士はアフリカの伝承に従うことにしました。
それは「カバのいない川には魚はいない。」というもの。
この言い伝えを信じ、ナイバシャで保護されていた雌のカバと、ドイツのサーカスに見捨てられたオスのカバの2頭が導入されました。
すると、次第に魚やその他の水中生物が安定して住み着く池に変わりました。
哺乳類であるカバは水中に空気の循環を生み出し、またその排泄物がプランクトンの餌となり、水中の生態系のバランスを保ち始めたのです。
この2頭は現在でもハラー・パークの広大な飼育場で暮らしており、余生をのんびりと楽しんでいます。
採石痕をいかしたロスチャイルドキリン飼育場
森林再生や水質改善に伴い、カバ以外の動物もハラー・パークにやってきました。
カバの飼育場にはゲムズボックが導入されました。
過酷な砂漠でも生き残ることのできるゲムズボックは港町の環境にも順応し、乾燥した草を食べ消化することで土壌の安定に貢献しています。
ハラー・パークで一番の人気者であるロスチャイルドキリンはナイロビのジラフセンターからやってきました。
来園者は餌やり体験を通じて、その希少性や自然保護について学ぶことができます。
キリンと同じ飼育場にはエランドとウォーターバックも暮らしており、これらの動物もまたこの土地の生態系のバランスを保っています。
3種が暮らす飼育場は、どこが端がわからないほどの広さです。
深く掘った跡が壁の役割を果たし、大地の歪さも生み出し、日陰も形成されていました。
まったく動物の姿が見えないこともあるため、餌やりの時間を狙っての訪問をおすすめします。
ハラー博士の功績により生態系の復活と地域社会への貢献を果たしたハラー・パークは、国連環境計画(UNEP)よりグローバル500賞を受賞しました。
地域住民の意識向上やエコツーリズムの促進にもつながっていることも評価されており、1987年の賞開始時から2003年まで連続で獲得しています。
採掘場跡に単に動物園を作るということであれば、セメント会社らしくコンクリートを流し込み、檻を立て、そのあたりにいる野生動物をハントし持ってくるだけですんだことかと思います。
それをしなかったバンブリ・セメント社、そしてその期待に応えたハラー博士は、本当に素晴らしいです。
生態系のバランス、動物保護、そして地域住民など、多角的に考えられた取り組みが進行されているバンブリ・ハラー・パーク。
これまで訪れた海外動物園の中でも特に心に残った場所となり、素直に応援していきたいと感じました。