【名称】ロペ国立公園(Lopé National Park)
【おすすめ度】★★★★★5
【見れた動物】マルミミゾウ、フォレストバッファロー、クロコロブス、マンガベイ。
【ポイント】豊かな熱帯雨林と氷河期に形成されたサバンナが残る生物多様性の宝庫。世界遺産にも登録されておりマルミミゾウやチンパンジー、マンドリル、フォレストバッファローといった貴重な野生動物が暮らしている。華やかさはないがディープな経験ができる国立公園。
【料金】75,000CFA≒19,500円(3つのアクティビティ合計、ガイド付)
【アクセス】首都リーブルビル(Libreville)南部のオヴェンド駅(Gare d’Owendo)からトランスガボン鉄道にて国立公園のあるロペ駅(Gare d’Lopé)まで約9時間。
※2024年6月
地上最大の動物ゾウ。
今も昔も変わらず、僕が一番好きな動物です。
幼い頃に多摩動物公園で見たゾウの大きな身体と長い鼻に魅了され、アフリカのサバンナでいつか野生のゾウを見たいという夢ができました。
そして2014年夏、タンザニアで夢を叶え、そこから動物観察の旅は始まりました。
あれから10年、再びゾウに会いにやってきたのは中央アフリカの赤道直下の国ガボン。
ゾウはゾウでもマルミミゾウ観察が今回の目的です。
マルミミゾウとは
マルミミゾウとはアフリカの西部から中部にかけての熱帯雨林で暮らすゾウの一種。
名前のとおり大きく丸い耳と牙が直線に生えるのが特徴です。
一説によると、深い森の中を移動するのに適した進化の結果といわれています。
かつてはサバンナゾウ共にアフリカゾウという種のくくりでありましたが、現在ではゾウはサバンナゾウ、マルミミゾウ、アジアゾウの3種とされています。
英語ではForest Elephants(森林ゾウ)と呼ばれており、種子散布者という大きな役割を担っています。
マルミミゾウがいなければ熱帯雨林の生態系のバランスが崩れてしまうほど、動植物の繁栄に大きく貢献しています。
しかし残念なことに、象牙目的の密猟や森林伐採などの影響で個体数が減っており、他のゾウの種同様に絶滅危惧種に指定されています。
一方で個体数が増えている地域もあり、人との軋轢が生まれています。
今回行ったロペ国立公園周辺はまさにマルミミゾウの被害が出ている地域です。
かつてゾウが襲撃してきた際に立ち向かって殺すという対応をしていましたが、国立公園化に伴いそれができなくなってしまいました。
そのためゾウの個体数が増え、そして恐怖を感じずに人間の畑や家を狙うゾウが出てきてしまい、場所によってはゾウに殺されてしまう事件も起きています。
殺す殺されるの争いをせず、ちょうどいいバランスで共存していく術が求められています。
ロペ国立公園とは
カメルーンやナイジェリアなどマルミミゾウ観察ができる国はいくつかありますが、治安情勢を考慮しガボンを選びました。
そして、ロアンゴ国立公園やイヴィンドゥ国立公園などガボンの中でもスポットはいくつかありますが、目星を付けたのはロペ国立公園です。
マルミミゾウの最後の生息地のひとつと言われているロペ国立公園は、豊かな熱帯雨林と氷河期に形成されたサバンナが残る生物多様性の宝庫。
マルミミゾウ以外にもフォレストバッファロー、ニシローランドゴリラ、チンパンジー、シタツンガ、アカカワイノシシ、マンドリル、ダイカーといった動物好きには堪らないラインナップが暮らしています。
また、バントゥー族やピグミー族など人類の生活の痕跡が多数発見されており、人の進化の歴史を辿るうえでも非常に重要な場所です。
2007年にはロペ=オカンダの自然環境と文化的景観の名で世界複合遺産にも登録され、ガボン最初の世界遺産となりました。
ここを選んだ理由としては、首都リーブルビルから直通列車が通っている(はず)、パックツアーに組み込まれていることが多いので宿泊施設など比較的整っている(はず)と、バックパッカーでも行きやすいのではという考えがあったからです。
情報収集と仮説
首都リーブルビルからロペ国立公園への入り口となるロペ村の駅まで列車で行けるという情報は手にしたものの、やはり主流は現地旅行会社のツアーに参加すること。
「Gabon, Tour, Forest Elephants, Lope national park」で検索してみると、ツアー詳細はいくらかでてきますが、ロペ国立公園以外も含まれている長期ツアーがほとんどでした。
またマイナー国のマイナーツアーが故、安心安全かつ快適に周ることができる旅行会社のツアーはかなりの高額でした。
オーダーメイドでロペ国立公園のみといった依頼はできそうでしたが、さらにお金がかかってしまいます。
円安も進んでおり、正直手出しできる金額ではありませんでした。
何かいい方法はないかと検索していると、個人で行ったことのある方の情報がちらちら。
情報を残してくれた先人に感謝です。
ですが、ヒッチハイクやバイク旅といった猛者たちの情報、かつパンデミック以前のものであり、あまり参考になりませんでした。
それでも
・ロペ村の宿泊施設は3-4軒のみであり、ロペホテルもしくはロペホテルアネックスが主流。そしてロペホテルの事務所が首都リーブルビルにある。
・リーブルビルのオヴェンド駅からロペ駅への列車は駅にて事前予約が可能。
・ロペ国立公園のゲートでアクティビティの申し込みができる。
ということがわかりました。
ここからは動物旅人としての本領発揮です。
上記全てが現在も変わっていないと信じ、こうすれば行けるという仮説を立て行動に移しました。
ロペ国立公園訪問に向けて行動開始
ガボンビザ取得
2024年6月時、日本人がガボンに渡航する際はビザが必須でした。(最新の情報は外務省のホームページをお確かめください。)
オンラインビザがあるため簡単に渡航許可がでると思っていたことも、ガボンに決めた理由の一つです。
しかし、そううまくいきませんでした。
オンライン申請してから1週間、2週間経っても全く返信がありません。
メールで問い合わせしてもうんともすんともなく、想定していた便を変更せざるを得ませんでした。
残された手は大使館で直接申請すること。
この時すでにヨーロッパの動物園巡りを開始していたので、フランスのガボン大使館に向かいました。
紆余曲折ありましたが何とかVisaを取得。
ただしガボン到着日からではなく申請時に提出したガボンを経つ航空券の日付が滞在の期限とされてしまいました。
この後、イギリスとフランスに行くこともあり、ガボンに滞在できるのはたった13日。
入国したらすぐに動く必要がありました。
ガボンの首都リーブルビル
チュニジアからモロッコ経由にて首都リーブルビルに無事に到着。
大西洋に面した湾岸都市であるため、海風が気持ちいい。
落ち着いた雰囲気でご飯も美味しく、すぐに好きになりました。
リーブルビルでの過ごし方はアフリカ旅の達人コジマ先生のブログを参考にさせていただきました。(アフリカ全54か国を制覇おめでとうございます!)
中心部のHotel Impérial Librevilleにチェックイン。
リーブルビルの宿泊料金は総じて高く、Booking.comで最安だったこのホテルも1泊7,700円でした。
ですが部屋は広く綺麗で、Wi-Fiサクサク、水圧も良いお湯シャワー、スタッフの愛想がよく英語も通じると文句なしのホテルでした。
ロペに行っている間、荷物も預かってくれました。
疲れもありホテルで一息したかったのですが、ロペ国立公園訪問に向けての行動開始です。
最優先事項は列車のチケット入手です。
ホテルやツアーは現地でどうにかなりそうですが、ロペ村に行けなければ元も子もありません。
ロペ村のロペ駅までの列車がでているのはリーブルビル中心部から南に10kmほどいったオヴェンド駅(Gare d’Owendo)。
リーブルビル内の移動はタクシーが主流となっています。
車社会であり、街中には黄色や紫といった多くのタクシーが走っています。
Gozemというタクシーアプリもありますが、ダウンロードしても僕の携帯だとうまく使うことができなかったため、乗り合いタクシーに挑戦することにしました。
まずタクシーに向かって人差し指をくいくいとやると停車してくれます。
そしてドライバーに行先と金額(フランス語)を伝えます。
言葉が不安な方は紙に書いて見せれば大丈夫です。
OKであれば頷いてくれますし、ダメであれば素通りされてしまいます。
ホテルのスタッフにオヴェンド駅までの相場を聞くと2,000CFA≒520円とのこと。
観光客ですし、いち早く駅に行きたかったため3,000CFA≒780円で聞いてみると一発OKでした。
トラブルにも巻き込まれるリスク軽減のためにも、観光客であれば少し高い金額を提示するのをおすすめします。
乗り合いタクシーなので道中人をおろしたり乗せたりで時間はかかります。
Googleマップの経路検索の推定時間の1.5倍を想定しておけば問題ないです。
列車のチケット入手
日本人は珍しいのか、車内での会話はとても盛り上がりました。
お互いの言語がわからくても、なんとなく意思疎通できてしまうのが、旅の楽しさの一つです。
中心部から40分ほどでオヴェンド駅に到着。
正面左にあったチケットカウンターには長蛇の列、ではなくフェンスを囲んで大勢の人が集まっていました。
様子を見ていると整理券をもらい、その番号が呼び出されたら購入列に並べるようです。
待っている間に希望のチケットを紙に書いておくことにしました。
ガボンの公用語はフランス語。
英語はホテル以外全く通じません。
窓口でのやりとりをなるべくスムーズにするためにも、こういった準備は有効です。
列車を運営しているのはLa Société d’Exploitation du Transgabonais (SETRAG)、通称トランスガボン鉄道(Trans-Gabon Railway)。
首都リーブルビルから南西部のフランスヴィルまで、約669kmを繋いでいます。
SETRAG公式サイトで列車の時刻表と停車駅、クラスを調べることできます。
以前は毎日運航していたようですが、現在は隔日となっていました。
首都と地方をつなぐ重要な列車でありながら便数が減っているため、満席だった場合も考え第二希望の列車の紙の準備もしました。
整理券をもらってから2時間を超えたあたりで、ひとりのセキュリティに声をかけられました。
少し英語が話せる方であり、紙を見せるとついてこいと言われました。
あと少しで番号が呼ばれる時だったので一瞬ためらいましたが、怪しいと思われたら元も子も無いのでおとなしくついて行くことに。
結果としてこれが大当たりでした。
駅の2階の特別カウンターに案内され、そのままチケット購入の手続きをしてくれました。
おそらくVIP向けのカウンターでしたが、駅にひとりぽつんとまっていたアジア人を心配に思い案内してくれたようです。
見ず知らずの訪問者を気遣ってくれる親切心にとても嬉しく思いました。
翌日発の便は満席でしたが、第二希望のチケットを入手することができました!
ロペホテルの事務所
無事にチケットを手にし、またセキュリティの優しさにも触れられたため、ウキウキな気分で駅を出発。
今度はロペホテルの事務所へ向かいます。
行きと同様に乗り合いタクシーを拾い、事務所がありそうな場所へとやってきました。
(正確な位置がわからなかったりする際は近くの大きな建物をタクシードライバーに伝えるのをおすすめします。)
ありそうなと書いたのは、正直なところ本当にあるのか不安だったからです。
Googleマップには掲載されておらず、先人の旅人のブログには正確な場所の明記はなく写真のみでした。
その写真に映っていた看板の文字から位置を予想しました。
恐る恐る向かってみると、しっかりと事務所がありました!
中に入ると英語が流ちょうなスタッフが迎え入れてくれました。
宿泊とアクティビティをしたいと尋ねると、まずは列車のチケットを持っているかとの質問が。
チケット入手を先にしといてやはり大正解です。
そして持っていることがわかるとタリフと共に丁寧に説明してくれました。
〇
ロペホテルとロペホテルアネックス双方ともにちょうど空きがあり、金額が安いロペホテルアネックスを予約することに。
支払いもここでしました。
なお、アクティビティについては、現地での申し込み&支払いとのことでした。
何かあったら連絡してねとワッツアップの連絡先もいただき、事務所の外へ。
仮説通りの結果を生み出すことができ、安心感に加え自己肯定感も高まりました。
3日後にせまったロペ国立公園への旅にドキドキワクワクを胸に首都を満喫し、いよいよ出発の日となりました。
いざロペ村へ
出発時間の2時間までには来てねとセキュリティに言われていたので、余裕をもって乗り合いタクシーに乗り、2時間半前にオヴェンド駅に到着しました。
ファーストクラスのチケット購入者には専用の待合ラウンジがあり、出発までクーラーのついた部屋で快適に過ごすことができます。
割高でしたがフードやドリンク販売もありました。
事前情報によると持ち込み荷物は10kgまで、それを超過するとプラス料金かつ荷物のみ別車輛になるとのことでした。
僕のバックパックは20kg弱。
プラス料金よりも別車輛に預けて行方不明になるリスクが嫌だったので、不要なものはホテルに預かってもらうことにしました。(ロペから帰ってきた日の宿泊予約をし交渉したらOKでした。)
結果としては待合室で荷物の重さを測られるとはありませんでしたが、身軽になったのでよかったです。
発車時間の20分前にゲートが開き、チケット確認を経て列車に乗り込みました。
想像以上に車内が綺麗で驚きました。
リクライニングもできますし、コンセントまで使えます。
ただし、クーラーが利きすぎていてとても寒かったので、道中ウルトラライトダウンを手放せませんでした。
アフリカとしてはまだ優秀な40分遅れで列車は出発!
最初は市街地の風景が続きましたが、すぐに熱帯雨林へと変わりました。
絶景とは言い難い、深い森の車窓が続きます。
ボーっと眺めたり、kindleを読んだり、寝たりして過ごしました。
オヴェンド駅からロペ駅までは通常約8時間かかります。
この日は出発が遅れたこともありますが、たっぷり9時間半かかり夜10時頃にロペ駅に到着。
駅で待っていたロペホテルのスタッフと合流し、車でロペホテルアネックスまで送ってもらいました。
駅からアネックスまで歩いて10分程ですが、あたりは真っ暗なうえ野生動物にいつ遭遇するかわかりません。
実際、道中でフォレストバッファローが早速飛び出してきました。
歩いている時に出会っていたら、命を落としかねません。
危険ですのでくれぐれも夜は村を歩かないでください。
他にも何かいるかなと見回しているうちにあっという間にロペホテルアネックスに到着。
ベットとシャワートイレのみのシンプルな部屋でしたが、清潔感はあり寝る分にはまったく問題ありませんでした。
この日は夜遅くなってしまったためアクティビティの話はできず、翌日朝に担当者がアネックスへ来てくれることを確認し、就寝しました。