オーストラリア/タスマニア島~野生のカモノハシを待つ!3つの観察スポット~

シドニーのタロンガ動物園にてオーストラリアの固有種をしっかり学んだ翌日、今回のオーストラリア渡航最大の目的であるタスマニア島へいざ出発!

シドニーからは1時間半程のフライトで、島の北部にあるローンセストン空港に到着しました。

ここで車をレンタルし、6日間動物探しの旅が始まりました。

念願のタスマニア島にやっと来ることができ、どんな珍しい動物に出会えるのかドキドキ・ワクワクが止まりません。

オーストラリアのタスマニア島は世界一空気が綺麗な場所
オーストラリアのタスマニア島は世界一空気が綺麗な場所
オーストラリア、タロンガ動物園のキリン展望台から見えるシドニー港の絶景①

オーストラリア/タロンガ動物園~シドニーの風景に溶け込む多彩な固有種達~

タスマニア島

オーストラリア南部に浮かぶタスマニア島。

1億6000万年前頃にゴンドワナ大陸からオーストラリア大陸が分裂、そしてそこから分離したタスマニア島には世界でも類を見ない素晴らしい原始林や地形が広がっています。

豊かな雨林に囲まれている事から世界で最も空気が綺麗な場所とも称されています。

そこに暮らすのは独自の進化を遂げた動物たち。

タスマニアデビルやタスマニアンパディメロン、ハリモグラ等、ほとんどがタスマニアあるいはオーストラリア固有種であり、貴重な生態系の宝庫と言えます。

今回タスマニア島に来た一番の目的は野生のカモノハシを観察すること。

早速、カモノハシとの遭遇率が高いと言われるスポットへと車を走らせました。

オーストラリア タスマニア島
世界のカモノハシの中心地 Latrobe の巨大モニュメント

世界で最も不思議な動物カモノハシ

カモノハシとはオーストラリア東部とタスマニア島の淡水域に生息する哺乳類。

顔は鴨、身体はモグラ、足にはカワウソのように水かきがあり、尾はビーバーと、他の動物を超越するユニークな外見を持つ動物です。

ヨーロッパの博物学者が初めてカモノハシの標本を見た際、その奇妙な姿に驚き、「異なる動物をつなぎ合わせた作り物ではないか」と疑ったという逸話もあるそう。

約1億年以上前からその特徴はほとんど変わっていない生きた化石であり、カモノハシの研究を通じて、哺乳類の祖先がどのように進化してきたのかを解明する手がかりが得られると考えられています。

オーストラリア_タスマニア島_platypus Houseのカモノハシ
世界で最も不思議な動物カモノハシ @Platypus House

奇妙なのは外見だけではありません。

カモノハシは哺乳類でありつつ卵を産む単孔類です。

メスは地面に掘った巣穴に卵を産み、孵化後に母乳で子を育てます。

オスの後ろ足の蹴爪には毒腺があります。

繫殖期になるとライバルと争う際に使用するそうで、人が刺されると激しい痛みが数週間続くほどの猛毒です。

水中で餌を探す際には目・耳・鼻を閉じます。

嘴にある電気受容器だけを頼りに獲物を探し、水生昆虫や小さなエビ・カニ、魚の卵などを食します。

そして最後に、カモノハシは光ります。

2020年の研究によって、体毛に紫外線を当てると青緑色に光ることが発見されました。

点滴からのカモフラージュ効果や同種間の識別に使われている可能性があるとされていますが、目的はまだわかっていません。

頭が混乱するほどの特徴があり、考えれば考えるほどカモノハシに魅了され、いつか絶対に会いたいと思っていた動物です。

カモノハシ観察の心得

これまでの僕の野生動物旅はサファリカーに乗り、或はジャングル歩き周り「動物を探しに行く」というものでした。

しかし、野生のカモノハシに出会うために「出てくるのを待つ」という方法をとりました。

清らかな淡水域に生息するカモノハシは夜行性であり、日中は土手に作った巣穴で過ごします。

日没から早朝にかけて、水の中へ繰り出し餌を探して食べるため、この時間を狙って各スポットへ向かいました。

スポットに到着しても、川辺を歩き回るという行動もしませんでした。

前述の通り、カモノハシは哺乳類です。

そのため肺呼吸であり、空気を吸うためには定期的に水面に顔を出す必要があります。

そのタイミングを逃さないためには、場所を転々と動くのではなく、ここと決めた場所でずっと待つのが効果的だと思ったからです。

オーストラリア_タスマニア島_カモノハシを見つけるには静かに待つ
カモノハシを見つけるこつは静かに待つこと

カモノハシ観察の心得、それは忍耐力と運!

ボノロング野生動物保護区が公表している10 Best Places to see Platypus in Tasmaniaといったネットの記事や実際に見たことのある人からの情報を頼りに3つのスポットを巡りました。

早朝にゲストハウスを出発し、スポットに到着後はポイントを選んで数時間待機。その後、日中は他の観光や動物を探しに出かけ、夕方には再びポイントに戻り、数時間待機。

好きでなければできない行動です。

そのおかげもあり、奇妙な姿を何回も拝むことができました!

野生のカモノハシの観察スポット①Fern Glade Platypus Reserve

朝9時にローセンストン空港に到着後、車を借りて早速カモノハシポイントへ。

まずやってきたのはFern Glade Platypus Reserve。


その名の通りカモノハシ保護区であり、イーミュー川に沿って500m程の散策路があります。

時間的にはカモノハシの活動時間ではない日中でしたし、初日ということで川沿いを一通り歩きました。

オーストラリア_タスマニア島_Fern Glade Platypus Reserve_1
野生のカモノハシの観察スポット①Fern Glade Platypus Reserve

急にガサっと音がし、現れたのは、、

タスマニアンパディメロン!

オーストラリア_タスマニア島_タスマニアンパディメロン
タスマニア固有種タスマニアンパディメロン

タスマニア固有種の小型のワラビーです。

早速、この島でしか会えない動物に遭遇することができました。

普段目にするワラビーとは違い、どちらかというとクオッカに似ています。

飛べない鳥のタスマニアオグロバンにも出会いました。

オーストラリア_タスマニア島_タスマニアオグロバン
こちらも固有種であるタスマニアオグロバン

川沿いを進むとカモノハシがいそうなスポットがいくつもありました。

ただやはり、明るい時間ということもあって出会うことはできませんでした。

結果的に、Fern Glade Platypus Reserveには(日中、夕方、早朝)と計3回訪れたのですが、奇妙な姿を見ることができずに終わってしまいました。

ただ看板掲示があるため、確かにここにはいるようです。

相手は野生動物、そう簡単には出会えません。

オーストラリア_タスマニア島_Fern Glade Platypus Reserve_2
カモノハシを見つけるのは簡単ではありません

野生のカモノハシの観察スポット②Tasmanian Arboretum

極寒のクレイドルマウンテン国立公園にて寒さに耐えるウォンバットのたくましい姿に感動した翌日にやってきたのはTasmanian Arboretum。

植物園と自然保護区と二つの顔を持つ、お散歩スポットです。

ここはFern Glade Platypus Reserveですれ違ったマダムがおすすめしてくれたスポットですし、タスマニアで働いていた方からここで見たという情報を手に入れていたので、大きな期待を抱いていました。

ただここは開園時間が9時00分~17時00分とカモノハシゴールデンタイムに来ることはできません。

少しでも可能性を高めるために、閉園間近に訪問しました。

駐車場から黒鳥たちの間をすり抜け、少し歩くと大きな貯水池があります。

オーストラリア_タスマニア島_Tasmanian Arboretum
野生のカモノハシの観察スポット②Tasmanian Arboretum

園内にはこの貯水池とそれに繋がる小さな大きな貯水池が点在しています。

大きな大きな貯水池では見つけにくいので、小さな大きな貯水池に狙いを絞ることに。

すると、、、水面をスーッと動く何かを発見。

いました、野生のカモノハシです!

オーストラリア_タスマニア島_カモノハシ_1
ついに見つけた野生のカモノハシ

初めて見る姿に自然と鳥肌が立ちます。

数カ所の海外動物園でもカモノハシは飼育展示されていますが、夜行性館であったり、水槽展示が主なため泳ぎまわったりと、水面を進む姿は見たことありませんでした。

音もたてずにスーッと動く不思議な見た目な動物は目が離せません。


呼吸のため水面に浮かび、スーッと泳ぎ、コポンと小さな音を立てダイブする。

しばらくするとまた水面に出てきて、泳ぎ、コポンと音をたてまた水中へ。

一度見つけると、何回か同じ動きをとらえることができます。

オーストラリア_タスマニア島_カモノハシ_2
野生で見て改めて不思議だなと思いました

念願の出会いを幾度も堪能することができました。

嬉しい発見であったものの、人工的に作られた園であるため、ザ・野生の姿が見たいという気持ちが強くなったため、ここには1回のみの訪問で終了しました。

すれ違った現地の人も、見れる頻度は高いとのことで、時間がない方や探すという体験をしたい方にはとてもおすすめのスポットです。

野生のカモノハシの観察スポット③Latrobe Shale Rd

Tasmanian Arboretumの後はPlatypus Houseを経由し、一度タスマニア島の南部へ。

ボノロン・ワイルドライフ自然保護区や魔女の宅急便のモデルと言われるパン屋を訪問した後、北部へ帰ってきました。

今回の大本命の観察スポット、Latrobeへ車を走らせます。

オーストラリア_タスマニア島_Latrobe_1
世界のカモノハシの中心地 Latrobe

Latrobeは”Platypus Capital of the World”(世界のカモノハシの中心地)と称されており、遭遇率が高いと言われています。

10 Best Places to see Platypus in Tasmaniaに載っていた、マージー川沿いのWarrawee Forest Reserve(ワラウィー森林保護区)へとやってきました。

オーストラリア_タスマニア島_Latrobe Shale Rd
野生のカモノハシの観察スポット③Latrobe Shale Rd

川沿いや森の中を走るクロスバイクのコースが整備されており、アウトドアアクティビティが楽しめる場所のようです。

駐車場も広々としており、清潔に保たれていましたが、あまり集客がうまくいっていないのか、訪れている人はほとんど見かけませんでした。

僕にとっては好都合です。

クロスバイクのコースから逸れた、川沿いの静かな道を進みます。

オーストラリア_タスマニア島_Latrobe_
途中、おそらく毒のある黒い蛇を踏みそうになりました

雰囲気はFern Glade Platypus Reserveと似ていますが、水面は非常に穏やかで、まるで何かを隠しているかのような静けさでした。

ちょうどいい木の幹に腰を掛け、30分程ボーっとしていると、スーッと動くものを発見。

カモノハシと人生二度目の対面です!


木の枝が流れるように音も立てず、大きな動きもせずに、水面を進み、十分に酸素を取り入れたら水の中へと潜ります。

水中に潜る際に出す音は、鹿威しのような心地いい音であり、何度も耳に癒しを与えてくれます。

野生動物との出会いの中で、これほどまでに音に注目したことも、そして動物が奏でる音に癒されたことも初めてであり、新体験でした。

オーストラリア_タスマニア島_カモノハシ_3
後ろ姿も素敵

この音を何度も聞きたいと思い、Latrobeへは通算4回(夕方、早朝、夕方、早朝)通いましたが、そのうち3回もその貴重な姿と音を感じることができました。

今回訪れた観察スポットの中でもっともおすすめの場所です。


運にも天気にも恵まれ、3つのスポットで合計8回のカモノハシチャレンジを敢行し、そのうち4回の観察に成功。

ついに、世界一奇妙な動物とも言われるカモノハシに出会うことができました。

象の長い鼻や大きな耳、爬虫類・両生類の美しい色彩など、「人間とはまるで違う」という不思議さに魅了されて動物好きになった僕にとって、このカモノハシとの出会いは、まさに夢のようなひととき。

子供の頃に感じたワクワクが蘇り、野生動物観察の楽しさを改めて思い出させてくれました。

見た目はもちろん、特に印象的だったのは音。

カメラの音声にも乗りきらない、その場に身を置いて初めて味わえる、特別な瞬間でした。

そして今回は、初めて「待つ」というスタイルでの野生動物観察にも挑戦。

時間をかけてじっと自然と向き合う中で、忍耐力と運が功を奏しカモノハシ観察が実現できたことは、とても喜ばしく、僕の中で間違いなくトップクラスの思い出となりました。