【名称】プラティパスハウス(Platypus House)
【おすすめ度】★★★★☆4
【見れた動物】カモノハシ、ハリモグラ
【ポイント】世界にわずか2グループしか存在しない単孔類、カモノハシとハリモグラの両方を一度に観察できる貴重な施設。英語によるガイドツアー形式で、保護された個体を解説とともにじっくり観察することができる。
【料金】$29.50AUD≒2,895円
【アクセス】タスマニア第二の都市ローンセストンから車で約45分。
【公式サイト】https://platypushouse.com.au
※2024年9月

奇妙な動物たちの宝庫、タスマニア島。
島の名を冠したタスマニアデビルはよく知られていますが、忘れてはならないのが「単孔類」の存在です。
世界にわずか2グループしかいない特別な仲間であり、その両方が、このタスマニアにひっそりと暮らしています。
単孔類とは
単孔類とは、哺乳類の中でも極めて珍しいグループです。
単孔とはそのまま「穴がひとつ」という意味であり、排泄と生殖に関わる穴が一つのみ(総排出腔と呼ばれる)です。
鳥や両生類、爬虫類と同じです。
ですが単孔類の最大の特徴は、哺乳類でありながら卵を産むこと。
鳥のように産卵し、温めて孵化させます。
さらに授乳の方法も独特で、乳首を持たず、母親の腹部からにじみ出る母乳を子が舐め取って成長します。
非常に原始的な特徴を残した仲間で、現存するのはカモノハシとハリモグラの2種類のみ。
タスマニアでは、野生下で、そのどちらにも出会うことができます。

野生のカモノハシを探そう
世界でもっとも奇妙な動物とも称されるカモノハシに出会うには、忍耐と幸運が欠かせません。
普段はサファリカーやトレッキングにて「「探しに行く」という方法をとっていますが、カモノハシ観察には「出てくるのを待つ」ことが重要です。

水辺でじっと息をひそめ、やがて姿を現した瞬間の喜びは、言葉では言い表せないほど特別です。
おすすめの観察スポットや、実際に出会えたときの体験については、別の記事で詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。
野生のハリモグラを探そう
カモノハシに比べて野生で出会いやすいと言われているのが、ハリモグラ。
丸っこい身体に固い毛(とげ)があるユニークな動物です。
クレイドル・マウンテン=セント・クレア湖国立公園や街中でも見つけたという目撃例が多くあり、比較的出会いやすいと動物とされています。
僕はなんとドライブ中に発見しました!
運転中、安全に考慮しつつ、道路わきを注視していました。
チクチクの何かがあるために車を停め確認しに行くという作業を繰り返した結果、クレイドル・マウンテン=セント・クレア湖国立公園からボノロング野生動物保護区に向かう道中に見つけました!

地面に顔をうずめたまま一切動かない恥ずかしがりやのハリモグラです。
驚かせてしまったのか、針を逆立て、時たまシーシーという警戒音を発していました。
残念なことにタスマニアではロードキルの被害にあったハリモグラの姿を目にすることがあります。

そのため移動させようとも思ったのですが、お互いのためにも触ることはできません。
皆さんもタスマニアで運転する際は、野生動物に気をつけてください。
プラティパスハウス
野生で探すのはちょっとハードルが高いという方におすすめなのが、タスマニア第二の都市ローンセストンから車で約45分程の場所にあるプラティパスハウスです。
ローンセストンからはバスも出ているため、運転できない方もアクセス可能です。

館内では1時間ごとに英語ガイドによるツアーが開催されており、ネットからの事前予約が必須となっています。
時間になり最初に案内されたのは、カモノハシの剥製や情報掲示が並ぶ展示室。
ここでは単孔類とは何かという基本的な解説から始まり、カモノハシとハリモグラ、それぞれの不思議な生態について説明してくれました。

次の部屋に進むと、そこには透明度の高いカモノハシのプールがありました。
タロンガ動物園では夜行性館にいたため観察が難しかったのですが、ここは明るい環境の中、クリアな水越しにその行動をじっくりと見ることができます。

水の中を華麗にスイスイと泳ぐ様子や陸に上がって毛づくろいする様子など、野生下で見ることは難しい、その愛らしい様子を堪能できました。
ここで暮らす個体はいずれも保護されたカモノハシで、残念ながら野生復帰は難しいそうです。

最後に案内されたのがハリモグラの部屋。
そこには4匹のハリモグラが僕らを待っていました。
道端で出会ったハリモグラはシャイでなかなか顔を見ることができませんでしたが、ここにいる子たちはとても好奇心旺盛。

ヨチヨチと歩き回りながら時には人のそばまでやってきて、愛嬌たっぷりの姿を見せてくれます。
さらに、長い舌を器用に使って餌を食べる様子も間近で観察可能です。
ユニークで愛らしい仕草に、すっかり心をつかまれてしまいました。

2025年現在、日本でハリモグラを飼育しているのはわずか2園のみで、カモノハシに至っては国内では飼育されていません。
日本でも、そして本来の生息地である野生下でも出会うのが難しい単孔類に、気軽に出会えるのがプラティパスハウスです。
お土産の種類も豊富でアクセスも良好なため、その貴重な姿を見るのにとてもおすすめの施設です。
付記:タスマニアタイガー
ローンセストンに訪れた際はぜひ、クイーンビクトリア美術館にも立ち寄ってください!
90年前に絶滅宣言されたフクロオオカミに関する貴重な展示が揃っています。

オオカミのような姿、背中の特徴的な縞模様からタスマニアタイガーと呼ばれたフクロオオカミも、オーストラリアならではの有袋類です。
かつてオセアニアにおける食物連鎖の頂点に立つ大型肉食性哺乳類だったタスマニアタイガーは環境破壊や変化による生息地減少、そして家畜を襲ってしまうことから人々の掃討の対象となり、1936年の9月7日、ホバートの動物園で飼育されていた最後の一頭「ベンジャミン」が亡くなったことで絶滅となりました。

ビクトリア国立美術館には、「ベンジャミン」の映像や剥製に加え、絶滅宣言後に見つかった痕跡も展示されています。
今なお生存を信じさせるような展示は、大きなロマンを感じさせてくれました。
タスマニアのどこかでひっそりと生きていてほしいです。

タスマニアタイガーと同時期に絶滅宣言されたニホンオオカミも、絶滅の原因は類似しています。
また昨今ではヒグマ、ツキノワグマと人との軋轢が深刻化しています。
肉食獣との共存は簡単なことではありませんが、食物連鎖のバランスにおいて重要な存在であるため、生息環境を守りつつ、物理的にも心理的にも適切な距離を保つことが大切です。