【名称】やまね酒造
【おすすめ度】★★★★★5
【ポイント】埼玉県飯能市でヤマネと森を守る酒造。生物研究家の若林福成さんが発酵の力と埼玉県の自然の産物を使い、環境保全のための酒造りを行っている。自然観察会、民泊、蔵見学、蔵人体験など、さまざまな体験ができる。
【料金】プランより異なる。
【アクセス】JR飯能駅からバス
【公式サイト】https://yamaneshuzo.jp/
※2024年1月
埼玉県南西部の飯能市。
ムーミンバレーパークで有名なこの市の森には、国の天然記念物であり日本固有種であるヤマネ(ニホンヤマネ)が暮らしています。
背中に黒い線があるのが特徴で、体長は10cm前後、体重は20g前後と大さじ1杯の味噌ほどしかない小さな齧歯類です。
本州、四国、九州と幅広く分布しておりますが、生息域である森林の減少により、地域によっては準絶滅危惧種に指定されています。
この小さな動物や飯能の自然と生物多様性を守ろうとユニークな活動をしている場所があります。
それが、やまね酒造。
蔵見学→民泊→蔵人体験→自然観察会のプランを体験してきました。
JR飯能駅からバスで西へ40分、穏やかな入間川沿いにやまね酒造とその民泊先があります。
やまね酒造とは
創業者は生物研究家の若林福成さん。
生態学や分類学、環境保全といった分野の研究や教育、エコツアーなど、動物や自然に関するさまざまな活動を行っています。
特に二枚貝と昆虫のスペシャリストということで、民泊中は日本や海外(若林さんはインドネシアのボルネオ島やコスタリカへの渡航経験あり)のお互いの体験談でも話の花が咲きました。
「やまね酒造の目的は、美味しいお酒をただ造り、提供することではありません。」
「ヤマネと飯能の森を守るために、微生物による発酵の力と埼玉県の自然の産物を使い、美味しいお酒を造っている。」
真っ直ぐな言葉で説明してくれたのが印象的でした。
酒造だけど、酒造じゃない。環境保全が目的です。
自然保護を体現する企業として、今までになかった動植物に寄り添った、自然派のお酒を目指す
目に見えない小さな微生物や菌のような存在からはじまり昆虫、鳥類など多くの尊い命が繋がっていくことで、私たちは生かされています。地球環境を保全しつつ、その先で得た果実が甘酒やお酒であると、私たちは考えます。やまね酒造は、酒造会社でなく自然と生物多様性と共に歩む、環境保全を専門にした企業です。
やまね酒造 公式HPより
蔵見学と蔵人体験
やまね酒造の蔵はなんとコンビニエンスストアが改装されたもの!
蔵内に入ると、飲み物の冷蔵庫やレジ裏であろう事務所などはそのままいかされており、謎の安心感に包まれました。
小さな場所で酒造りを始めた実績は海外から注目されており、昨今は外国人訪問客も多いそうです。
蔵見学はまず、やまね酒造の酒造りについてから始まりました。
さまざまな縁やきっかけから飯能市で酒造りを始めることにした若林さん。
そのひとつが“発酵”。
「発酵=微生物という”動物”の働き 」という点から酒造りに興味を持ったそうです。
そのため若林さんは、今では日本全国数少ない”木桶“による酒造りを行っています。
木桶と発酵の効果で、ステンレスタンクでは出せない味が生まれるからだそうです。
また、お酒に使うお米や木桶、その他の道具も埼玉県産の自然の素材にこだわっています。
酒造りから地域循環を創りだしていくことも目指しています。
時期によって蔵人体験の内容は変わりますが、僕が訪れた際は宿泊した翌日に、木桶や道具の天日干しの作業を行いました。
天日干しで浴びる太陽光だけでなく、風によって運ばれてくる”何か”もまたお酒にとって面白い影響を及ぼす可能性があると若林さんはおっしゃってました。
民泊でしか味わえないお酒
蔵のすぐ隣に一軒家の民泊先があります。
和室の2部屋が宿泊場所とされており、おじいちゃんおばあちゃんに来たような懐かしい雰囲気のお部屋でした。
宿泊者は、やまね酒造で製造されたお酒が飲み放題となります!
そしてさらに、ここで提供されるお酒はここでしか味わえない幻のお酒ばかりです。
「信念や背景、環境と共にお酒を味わってほしい。」という思いがあるため、滅多に市場に卸していないからです。
やまね酒造特製味噌鳥鍋の美味しい夕食と共に、たくさん飲ませていただきました。
ひんやりと舌ざわりも楽しいシャーベット状のお酒、まろやかな甘みとともに蜂蜜特有の風味が広がる飯能産蜂蜜を加えたお酒、飯能産の埼玉県を代表するお茶“狭山茶”を使ったお酒など、少量ずつ丁寧に造られていているお酒の贅沢な味わいを存分に堪能させていただきました。
お酒や動物、旅、自然などなど、次から次へと話も膨らみ、とても楽しく素敵な時間を過ごすことができました。
ヤマネの巣箱の確認
ヤマネの巣箱の確認鳥のさえずりと1月のわりに暖かい太陽の光で目覚め、清々しい朝を迎えました。
天日干しの作業の後、自然観察会へ。
ヤマネの生態研究のために、飯能の森に巣箱を設置している若林さん。
今回の自然観察会では巣箱の中をチェックしに行きました。
夜行性かつこの時期は冬眠中のため、ヤマネに出会うことは滅多にありません。
ただ、ヤマネの痕跡は確かにそこにありました。
配管による手作りの巣箱をそっと覗くと、木くずが入ってました。
きっと小さな身体で一生懸命に集めたのでしょう。
厳しい冬をなんとか乗り越え、春にはまた活発に動き回ってほしいです。
最後に
酒造りを手段として、環境保全に取り組むやまね酒造。
美味しいお酒を飲みながら、自然と動物、酒造りについて学ぶことができる、唯一無二の酒造です。
東京からのアクセスも良いため、週末にぜひ訪れてみてください。
BBQやテントサウナもすることができます。
酒造りというユニークな方法で動物と自然を守る若林さん。
知的かつマニアックな話と情熱、そしてお人柄にとても魅了されました。
ありがとうございました!