【名称】オロイスクット保護区(Oloisukut Conservancy)
【おすすめ度】★★★★☆4
【見れた動物】サバンナゾウ、カバ、アミメキリン、シマウマ、ヌーなど。
【ポイント】マサイマラ国立保護区の北に隣接する私営保護区。ゲームドライブだけでなく、ウォーキングサファリやカバのいる川での釣り体験など私営ならではの幅広いアクティビティが可能。
【料金】アクティビティと人数によって変動。
【アクセス】首都ナイロビ(Nairobi)からキルゴリス(Kilgoris)までマタツで約7時間。そこからバイクタクシーで約1時間半。
【公式サイト】https://www.oloisukut.co.ke/index.html
※2024年6月
ロペ国立公園での素敵な出会いを終え、再び列車にて首都リーブルビルへ帰着。
ロペ発は3時間遅れ、移動時間も往路よりかかり、クタクタでホテルへつきました。
マルミミゾウ運はとても良かったのですが、列車運には恵まれなかったようです。
お気に入りの露店でご飯を食べたり国立博物館に行ったりと、数日間をまた首都で過ごし、達成感と名残惜しさを胸にガボンを出国。
お次の国はケニアです。
悪名高いエチオピア航空を乗り継ぎ、首都ナイロビに到着しました!
今回ケニアを訪れた理由の一つは、人とゾウの衝突を解決するための養蜂事業を進めようとしているWildlife Ventures Ltd.の代表、米田君に会うことです。
人とゾウの軋轢を解決する養蜂事業
Wildlife Ventures Ltd.は人と野生動物の軋轢をビジネスを通して解決し、環境保全と社会経済が両立する世界を目指すスタートアップ企業。
代表の米田君は幼い頃から動物とマサイマラ保護区に憧れを持ち、大学生の時に単独でケニアへ。
そこで人間と野生動物が共存する上での問題を知り、ボーダレスジャパンを経て、2024年に会社を設立しました。
彼を知ったのはクラウドファンディングです。
養蜂がゾウと人間を救うという内容に魅かれました。
サバンナゾウは蜂の羽音を嫌うという習性があります。
その習性を上手く利用し、畑や家の周りに養蜂箱を設置することでゾウの侵入を防ぐことができます。
そして養蜂箱からは蜂蜜や美容に使われる蜂毒を採取することができ、住民がこれを販売することで収益にすることもできます。
お互いにいい影響をもたらすビジネスモデルと動物の習性を活用するアイデアに強く興味を持ちました。
彼に会って話をききたい、活動を見てみたい、そして何か手伝いたいと思いコンタクトを取ってみると快諾の返事が。
ナイロビで合流し、ケニアの主要な交通手段であるマタツ(乗り合いバン)に乗って、彼の活動拠点であるオロイスクット保護区に向かいました。
オロイスクット保護区とは
世界屈指のサファリスポットであるマサイマラ国立保護区。
その周辺にはいくつかの私営保護区が点在しています。
オロイスクット保護区はそのうちのひとつであり、マサイマラ国立保護区の中でも特に動物が多いと言われているマラ・トライアングルの北に隣接しています。
人と野生動物の緩衝地帯であるこの約133㎢(鳥取県米子市と同じくらい)の保護区は、野生動物の保護とコミュニティの生活を向上させ収入源を多様化することを目的に2006年に設立されました。
米田君はこの地を拠点とし、養蜂箱の設置のほか、地域住民理解や説明、野生動物調査、蜂毒採取、卸先への営業、スタディツアーなど、奮闘しています。
※活動や体験に興味がある人は、是非米田君の相談してみてください!
オロイスクット保護区が特に力を入れている分野が観光業です。
利益率が高く、収益を得るまでの時間が短い、そして野生動物とずっと一緒に暮らしてきたからこそできる事業です。
そして“私営”保護区であるということが最大の強みです。
アフリカでサファリを行う場合、国立公園と名のつくエリアでは基本的にゲームドライブ(車でのサファリ)が主流で、道から外れることはできず、開園・閉園時間など多くの細かいルールが存在します。
しかし、私営の保護区では、土地の所有者が自由に管理できるため、より柔軟な体験が可能です。
もちろん、野生動物を傷つけない、ガイドの同行は必須、環境保護、観光客の安全など、守るべきルールはありますが、オロイスクット保護区では、訪問者の“やりたいこと”を最大限に実現してくれます。
ゲームドライブ、キャンプ、マサイ文化体験、食育体験、調査研究、ボランティア活動などなど、世界各国から人々を受け入れています。
滞在中、僕はウォーキングサファリと釣りをリクエストしました。
ウォーキングサファリ
サバンナを歩いて動物観察をするウォーキングサファリ。
肉食動物が少ないからこそできる体験です。
しかし、まったく肉食動物がいないわけではなく、バッファローやカバなどの危険な動物もいるため、単独で歩くことはできません。
そのため、マサイ人のガイドと銃を持った私営保護区のレンジャーと共にサバンナを歩きました。
まず出会ったのはヌーとシマウマ。
サバンナでは必ずと言っていいほど見られる動物です。
この保護区はマサイマラエリアですが、ここのヌーは大移動をしません。
群れがそれほど大きくないためです。
個体数が増えると、食料が不足し始めるため、移動が必要になります。
そのため、大移動をするヌーやシマウマの群れは何万、何十万頭という規模となります。
食べ物に困らず定住しているヌーのことを、ガイドのアーノルドはResident(住民)呼んでいました。
次に出会ったのはインパラのウィナーの群れ。
これも、アーノルドの特有の表現でした。
インパラは、2つのタイプの群れを形成します。
1つは、オス1頭と複数のメスと子どもたちから成るハーレム。(インパラはオスのみ角があります)
戦いに勝ったオスが一夫多妻制の王として君臨します。
アーノルドはこの群れをウィナーと呼んでいました。
一方、ルーザーとは、戦いに敗れ、いつか自分のハーレムを持とうと夢見るオスだけの集まりです。
インパラ界では、強い者だけがモテるのです。
3時間ほどサバンナを歩き周り、サバンナゾウやキリン、エランド、トムソンガゼル、カバなど、東アフリカらしいラインナップを拝むことができました。
カバを観察しながらキャットフィッシュを釣る
翌日はヌーの川渡りでお馴染みのマラ川の上流へと釣りに行きました。
サバンナを再び歩きマラ川に到着すると、何やらプシューという音が。
なんとカバの群れがいました。
20頭以上のカバが水面に浮き、ダラダラと日光を浴びています。
カバは世界一危険な動物と呼ばれることもありますし、カバがボートを襲うナショナルジオグラフィックの動画を鮮明に覚えている僕は正直かなりビビっていました。
「ある程度の距離を保っていれば、カバは陸の動物を襲うことはない。ただし水の中には絶対に入るな。」とのことでしたが、気が気ではありません。
目と鼻の先にカバがいるというここで味わえない緊張感の中での釣りを2時間ほど楽しみました。
釣果はキャットフィッシュ1匹にティラピア2匹と思ったよりは釣れませんでしたが、貴重な経験に大満足です。
帰りの道、アーノルドに「道なき道をなぜ迷わずに進めるのか?」と聞きました。
すると「木や岩が目印になっている。例えば東京でも〇〇まで△km、右に行けば◇◇という看板があるだろ?僕らは木や岩がそのメッセージを伝えてくれる。」と言われました。
わかるようで全くわからない、そして身に着けるには相当な時間を擁するスキルに驚きました。
共存とは
ウォーキングサファリとフィッシング、どちらのアクティビティでもサバンナを2時間以上歩きました。
アンテロープ系やシマウマは視線の高さがほぼ同じとなるので、目が合うとドキッとします。
サバンナゾウやカバなど、襲ってくる可能性のある動物を見つけた際には、風の方向にも注意を払わなければなりません。
ゲームドライブとはまた違った面白さや学びがありました。
そして出会えたのは野生動物だけではありません。
住居や畑、団らんする姿、牛や羊の放牧など、人々の暮らしがあります。
マサイの牛の背後にシマウマがいたり、カバのいる川の隣に運動場があったりと、互いに気にすることなく生活が混ざりあっていました。
言葉で表現するのは非常に難しいのですが、“共存”という言葉があまりにも強すぎる、学術的すぎると感じるほど、とても自然で穏やかな暮らしが広がっており、この状態こそ真の“共存”だと感じました。