【名称】ロペ国立公園(Lopé National Park)
【おすすめ度】★★★★★5
【見れた動物】マルミミゾウ、フォレストバッファロー、クロコロブス、マンガベイ。
【ポイント】恵まれた熱帯雨林と氷河期に生まれたサバンナが広がる生物多様性の宝庫。マルミミゾウ最後の生息地のひとつとされている。マルミミゾウやニシローランドゴリラ、アカカワイノシシ、シタツンガといった貴重な野生動物が生息している玄人向けの国立公園。
【料金】75,000CFA≒19,500円(3つのアクティビティ合計、ガイド付)
【アクセス】首都リーブルビル(Libreville)南部のオヴェンド駅(Gare d’Owendo)から国立公園のあるロペ駅(Gare d’Lopé)まで列車で約9時間。
※2024年6月
ロペ国立公園のアクティビティ
翌朝7:30、朝食を食べていると一人の男性がホテルに来ました。
彼はロペ国立公園のエコガード(レンジャー兼ガイド)。
英語は少しだけだったためGoogle翻訳を使いながら、アクティビティについての話を聞きました。
ロペホテル事務所でもらったタリフのうち、2024年6月時に実施しているのは以下の3つでした。
・MONT BRAZZA=標高約400mのブラザ山を登り景色を堪能するハイキング。午前中に実施。
・SAVANE=サバンナを車で周り動物を観察するサファリ。夕方に実施。
・FORET=熱帯雨林に入り動植物を観察する森林散策。午前中に実施。
1アクティビティは30,000CFA、同日に2つ参加すると計40,000CFA、つまり3アクティビティ行うと70,000CFAになります。
ただし、僕は単独であり、この時期は他の観光客がかなり少ない時期だったため、3つで75,000CFAを提示されました。
一人参加でお金がかかるのは仕方がありません。
話をした日の翌日にブラザ山ハイキングとサバンナサファリ、翌々日に森林散策が可能ということで提示金額のままお願いしました。
支払いは翌日、国立公園のゲートとのこと。
インドネシアの二の舞にならないようにエコガードの証明書も見せてもらいましたし、国立公園に直接支払いとなりましたので、これで準備は全て整ったと安心しました。
翌朝までまだかなりの時間がありましたので、ロペの村を散策。
散策といってもとても小さな村ですし、商店やレストランも片手ほどしかありません。
これまで訪れた国立公園の入り口となる村の中で最も観光地されていませんでした。
お土産物屋もありません。
ですが、それはそれでいいと感じました。
穏やかな時間が流れ、地元の人々の日常がそのまま垣間見え、静かでのんびりとした居心地の良い村でした。
ブラザ山ハイキング
翌朝7:30。
朝食を食べ終え、さていつ来るかなと待っていると時間通りに彼がやってきました。
ここはアフリカ、オンタイムで迎えに来るとは驚きです。
挨拶を交わし、まずは国立公園公園のゲートへと徒歩で向かいます。
歩いている途中「今日登るブラザ山はあれだよ。」と教えてくれました。
ブラザ山の頂上には携帯会社のアンテナが建っています。
眼下にはロペ国立公園らしい景色が広がっているとのことでした。
ロペホテルアネックスから歩いて15分ほどでロペ国立公園のゲートに到着。
75,000CFAを支払いし、エコガードや事務官の住居を抜け、ブラザ山ハイキングはスタートしました。
最初は平坦なサバンナを進みます。
サバンナといっても他のアフリカサバンナのような乾燥地帯ではなく、背の高い草が生い茂っていました。
遥か昔から人類が暮らしているこのエリアでは生態系を守るために野焼きの文化が今も根付いています。
毎年8月に行われるため、僕が訪れた6月は草がとても育っている時期でした。
ただし、歩きにくいというわけではなく、ブラザ山には生活に欠かせない電波塔があるため、道は比較的整っていました。
1時間弱ほどサバンナを進みブラザ山の麓にたどり着きました。
ここからは一気に山頂を目指します。
蛇行しながら登るわけではなく、山頂に向かって真っすぐ進みます。
手を使わないと登れないほど急斜面もありますし、砂利や岩の上を歩くのでとても滑りやすかったです。
また、湿気も多く、すぐに汗だくだくになります。
休憩を挟みつつ、なんとか登頂!
眼下にはサバンナの中に熱帯雨林が点在しているユニークな光景が広がっていました。
豊かな熱帯雨林の緑と氷河期に形成されたサバンナの黄土色が織りなす、ロペ国立公園北部ならではの光景です。
下山時は登ってきた道を戻るのではなく、蛇行しながら下りてていく道を進みました。
傾斜も少なく進行方向に景色が広がるため、往路よりも楽しみながら歩くことができました。
途中「あそこを見ろ。」とエコガードに言われ、視線を向けると木の上にクロコロブスを発見!
アフリカ中西部の限られた地のみに生息するとても貴重なサルです。
出会えた喜びよりも双眼鏡を使ってやっと判別できるくらいの距離にいたクロコロブスを見つけ出したエコガードの視力への驚きの方が大きかったです。
僕も平均以上には動物を見つける力があると思いますが、やはりエコガードにはかないません。
約3時間のブラザ山ハイキングはロペ国立公園の絶景と貴重なサルとの出会いがありました。
サバンナサファリは16時からのため、エコガードとはゲートで一旦お別れ。
ホテル近くの食堂で昼食をとり、疲れもあったため仮眠しました。
サバンナサファリ
またまたオンタイムにエコガードが車で迎えに来ました。
自衛隊の車のように後部座席は向かい合わせで乗る仕様だったため、助手席に案内されました。
途中、一般的なサファリカーとすれ違ったので、人数がいればこのタイプになるのかなと思います。
ブラザ山ハイキングで歩いたサバンナを更に奥へと進みます。
すると何でもない場所で突然に止まりました。
故障かなと思っていると「降りるよ。」とのことで、車道をそれてサバンナに徒歩で入りました。
草をかき分け進むと、目の前にフォレストバッファローの群れが!
みんなで仲良く泥遊びをしていました。
夕方になるとこのポイントに集まることからバッファロープールと呼ばれているそうです。
赤褐色の身体と切れ込みの入った耳が特徴のフォレストバッファロー。
あたりを少し警戒しており、耳をパタパタさせている姿が何とも愛おしい。
到着日の夜にも出会えましたが、バッファロープールではゆっくりと観察することができました。
車に戻り、さらに走ります。
進むにつれ草の背丈が高くなっていき、場所によっては車高以上のところも。
マルミミゾウも覆われてしまうほどです。
この時初めて知ったのですが、ロペ国立公園はちょうど野焼き前でした。
野焼きとは生態系を守り受け継ぐために草原に火をいれることであり、日本では熊本県の阿蘇地域などで行われています。
野焼き直前の6月は草が生い茂り動物たちが隠れてしまうため、動物観察には適していない時期だったそうです。
ショックを受けましたが、狙った動物は確実に見てこれたこれまで僕の動物運とガイドの腕を信じるしかありません。
悪路を安全に走行しながらも左右に首を振り必死に探してくれる彼はとてもたくましく見えました。
すると再度車が止まりました。
「ゾウがいたぞ!」ということで、また二人で車を降りて茂みを歩くと、
ついにマルミミゾウを発見しました!!
サバンナゾウではなくマルミミゾウであると肉眼でギリギリ認識できるほど遠い距離でしたが、
大きくて丸い耳、サバンナゾウより小柄でシャープな身体、真っすぐに伸びた象牙は間違いなくマルミミゾウです。
野生の個体らしいタスカー(立派な象牙をもったゾウの総称)でした。
待ち望んでいた出会いに、喜びがこみ上げます。
長旅を経てやっと会えたというこの瞬間が、まさに動物旅の醍醐味です。
しばらく観察していると、すぐそばに子どもがいることがわかりました。
1歳か2歳くらいでしょうか、母親の横をぴったりとついていっています。
2頭一緒にサバンナを闊歩しながら草木を食べています。
マルミミゾウはサバンナゾウとは違い、数頭のみで群れを形成します。
また群れ内でも別行動したり、他の群れに遊びにいったりすることもあるそうです。
サバンナでの食事に満足したのか、森へと帰っていきました。
幸運なことに、この後3頭、5頭、3頭と合計13頭のマルミミゾウをサバンナサファリで観察することができました。
僕の動物運ももちろん、エコガードの腕の大勝利です。
この日、サバンナサファリをしていた他のグループは1頭も見れなかったそうです。
言葉が伝わらない異国の旅人にゾウを見せようと、奮闘し見つけ出してつけてくれた彼には感謝しかありません。
観光客があまり来ず人馴れしていないため、近くで見ることはできませんでしたが、
正真正銘の野生動物であり、探し出すワクワクと密かに観察するというドキドキを感じることができ、大満足のサバンナサファリとなりました。
サンセットを横目にホテルに帰着。
予定だと2時間でしたが、3時間弱もサバンナへ連れ出してくれていました。
本当に頭が上がりません。
「また明日!」という言葉を交わし、眠りにつきました。
森林散策
翌朝はブラザ山ハイキングより少し早い7時が集合時間。
この日は10分ほど待ちましたが、それでも優秀です。
フランス人のグループと同じ車に乗り、再びロペ国立公園へ。
道中にフランス人と話したのですが、僕がロペホテルのタリフで知ったアクティビティ以外にも、エコガードと交渉することで様々なアクティビティができるみたいです。
サバンナをサイクリングしたり、GPSを付けたマンドリルの群れを追ったり、サバンナ内で一泊したりと多岐に渡ります。
ただし、交渉には日常会話レベル以上のフランス語が必要そうでした。
僕とエコガード(この日のみ別の男性でした)はサバンナと熱帯雨林両方が視界に入る道で途中下車。
サバンナ奥地へと進むフランス人グループに別れを告げ、ここからは徒歩で森へと向かいました。
ブラザ山ハイキングの時とは違って、背丈を超える草が生えた道なき道を進みます。
いつ野生動物とばったり出会ってもおかしくありません。
こちらからもあちらからも見えない状況に、少しばかり恐怖を感じるほどでした。
しばらく行くと目の前に熱帯雨林が現れました。
中に入るとそこは別世界!
鬱蒼という言葉がこれほどまでに相応しいところは他にありません。
広がる空と乾いた草が生えるサバンナから、太陽の光が遮られた深緑の静かな熱帯雨林に足を踏み入れたため、その劇的な変化に不思議な感覚に包まれました。
自由気ままに生えている草木をかき分け、熱帯雨林をさらに行きます。
エコガードは拙い英語でたくさん説明してくれました。
薬として使われる草木やマルミミゾウやダイカーの糞、アカカワイノシシの寝床跡、
マルミミゾウが削った木の幹もあり、本当に森林で暮らしているんだなと実感しました。
突然ガサガサっという音と叫び声が聞こえ、エコガードの指示で見上げてみるとマンガベイがいました。
ギニアからケニアの森林にすむマンガベイは陸生霊長類。
一日の7割以上を地上で過ごすサルが木の上で餌を食べている姿を見れたのはむしろレアです。
小一時間ほど熱帯雨林を散策し、ドロップオフしてもらったポイントへと戻ってきました。
方向感覚にはかなりの自信がある僕ですが、一人では絶対に迷っていました。
どうやったらそんなにスムーズに歩けるのかと聞いてみると、
「ちょっと枝を折ったり足跡を強く付けたりして自分が進んできた方向がわかるようにしている。もちろんこの森に小さい頃から慣れ親しんでいるしね。」とのこと。
流石のひと言です。
迎えの車が遅くなりそうだったし、ホテルまで6kmほどとそれほど遠くなかったので、一緒に歩いて帰ることにしました。
帰る途中、人が暮らしていた痕跡も発見できました。
ロペ国立公園エリアはロペ=オカンダの自然環境と文化的景観という形で世界複合遺産に登録されています。
生態系だけでなく、人の進化の歴史を辿るうえでも非常に重要な場所です。
まとめ
念願のマルミミゾウ観察は運とエコガードに恵まれて無事に終了!
ガボンに来て、ロペ国立公園に来て本当に良かったです。
ですが、心残りができた場所でもあります。
当初はシタツンガやアカカワイノシシは普通に見ることができ、ニシローランドゴリラやチンパンジー、マンドリルのどれかしらにはきっと会えるだろうと思っていました。
ですが結果的には、これまで参加した野生動物観察史上一番動物に出会えませんでした。
悔しさはあります。もっと様々な動物を観察したかったです。
ですが、次々に出てくる痕跡や「動物の匂いがする。」というエコガードの言葉、そしてカメラトラップの映像から間違いなくそこに動物が暮らしていることがわかりました。
同じ場所にいれただけでとても嬉しく思います。
また、常に五感が研ぎ澄まされ、まるでギャンブルのようなドキドキワクワクがある野生動物観察の魅力を改めて実感しました。
動物園のスターたちが揃う東アフリカのサファリほど華はありません。
人馴れしていなく数も多くないため観察も難しいです。
行くのも大変です。
麓の村も全くと言っていいほど観光地化されていません。
おすすめ度★5にしていますが、安易にすすめられるサファリスポットではありません。
玄人向けの奥深い国立公園です。
いつかリベンジできることを夢見ています。
僕史上最もディープな動物観察であり、忘れられない思い出ができました。
スペシャルサンクス
この後は、マルミミゾウの研究をされている大坂さんの所にお邪魔させていただきました。
糞を採取し洗ったり、村調査を行ったり、カメラトラップを回収したり、樹冠の動きのデータを集めたりと、貴重な体験をさせていただきました。
研究ステーションにはなんとマルミミゾウも遊びに来てくれました。
お世話になりました!ありがとうございました。